スコットランドにおけるニット

スコットランドにおけるニットは他の地域とは異なり、独自の発展を見せることになります。

 

他のヨーロッパ諸国が機械編みへと移行していた17~18世紀にも、スコットランドでは手編みのニットが主流で人々の生活を支えていました。

 

この時期のスコットランドではセーターをはじめ靴下やキャップなど、ほとんどの家庭でニット製品が編まれていたそうです。

 

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これにはスコットランドの地形や天候が大きく影響していると言われています。

 

当時のスコットランドでは漁業で生活をする人々が多く、そのため雨や寒さといった厳しい気候に耐えうる、油分を含んだ手編みのニットが作業着として使われていました。

 

 

ほとんどの漁師が手編みで編まれたニットを着ていたため、他と区別するために多種多様な編み模様が生まれたそうです。

 

不慮の事故で漁師が亡くなった時には、着ているニットの模様から身元の確認を行っていたという話まであります。

 

フェアアイル柄やアーガイル柄といったパターンも、中東のデザインから影響を受けながらこの頃のスコットランドで確立されたと言います。

 

 

特に北海に浮かぶシェトランド諸島では、地元のシェトランドシープからとれるウールがニットに最適だったこともあり、クオリティの高い手編みのニットが作られ今でも産業として残っています。

 

20世紀にはアラン編みと言われ、今でも多くのデザイナーに使われることの多い縄模様のステッチが生まれました。

 

 

上記の二種類の特徴を持ち、今でも世界中にファンの多いブランドがインバーアラン(Inverallan)です。

 

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ブランドの代名詞といわれるアランニットは、およそ25000ステッチからなる一枚のニットを、ニッターが約90時間かけて編み上げると言われている老舗中の老舗。

 

ここ日本でも、BAPEやNEIGHBORHOOD、WTAPS、DELUXE、などなど数多くのドメスティックブランドとのコラボレーションを展開。

 

そのクオリティの高さから、RON HERMANなどの有名セレクトショップの別注も数多くリリースされているなど、ハンドメイドニットの最高峰と言われるブランドです。

 

 

同じくスコットランドのニットブランドで人気が高いのがハーレーオブスコットランド(Harley of Scotland)

 

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こちらのブランドはインバーアランとは対称的に、イタリア産のメリノウールと最新テクノロジーを駆使し、軽さと柔らかさを追求したニット作りが特徴。

 

最近ではあまり見なくなった、スコットランド伝統の”シームレスニッティング”と呼ばれる、パーツを繋ぎ合わせないフルシームレスの製法をとっていることでも有名です。

 

 

ニットの歴史 20世紀~現在

21世紀に入ると、インターネットの成長や普及にともなうように、ハンドメイドやDIY(Do it yourself)への関心が強まります。

 

人間って不思議ですよね、便利になればなるほど原点回帰というか、反比例して不便利なものに関心を持ち、その良さを再確認するという。

 

 

素材においてもアルパカやアンゴラ、メリノウールなど多種多様なものを取り入れたことで、ニット製品は今までと違った表情を見せるものへと変化しました。

 

特に綿(コットン)においてはテクイノロジーの進化によって低コストで簡単に製造が可能となったり、通常のものとは一線を画す高価な綿やシルクなどの新しい繊維も広く使われるようになりました。

 

ジュリア・ロバーツやウィノナ・ライダー、キャメロンディアスなどがこぞって自作のハンドメイドニットを製作したこともこのリバイバルの大きな要因となったようです。

 

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インターネットの普及で世界中の人々とコンタクトが取れるようになり、ハンドメイドの生産者(ニッター)と消費者をつなぐものができたことはこの時代における最大の変革でしょう。

 

今まで興味を持たなかった人たちが興味を持ち始めたことで、様々なアイデアが生まれ、デザインにも反映されました。

 

 

テキサスニッターが始めたとされている公共物や自然物などにニットの装飾を施す”Yarn bombing”や”Guerrila knitting”と呼ばれるグラフィティやストリートアートのようなムーブメントも生まれ、違法とされる国もありながら世界中で展開されています。

 

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その他、ケーシーとジェシカのフォーブス夫妻が立ち上げたニッター専門のSNSであるRavelryには全世界で600万人以上が登録しており、こちらでは作成したものを販売することもできるなど、ニッターやニット製品の市場を支えています。

 

ニットの歴史 機械編み~20世紀

1589年にウイリアム・リーが編み機を発明して以降、急速に手編みから機械編みへと移行したニット生産。

 

その後1657年にオリバー・クロムウェルによってFramework Knittersという会社がロンドンに設立されました。

 

この会社は中世の貿易ギルドから今でも続く同業者団体の’リヴァリ・カンパニー’の一員で、その中で64番目の地位を獲得しています。

 

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この頃はまだ動力がなかったこともあり、大規模な工場生産ではなく、各家庭で編み機を使いニットを編んでいたそうです。

 

そして18~19世紀に起こった産業革命において、動力源として蒸気機関が開発されたことでいよいよニットの生産も工場生産にシフトしていきます。

 

 

ファッションとしては、1920年代に入り広く一般に普及し、特に漁師などは仕事着として多くの人が着用していたそうです。

 

その他テニスやクリケット、ゴルフなどのスポーツにて多く着用されたこともニットの普及を助けることになったようです。

 

ココ・シャネルがVOGUE誌でニットをフィーチャーしたのをはじめ、ハイ・ファッションのデザイナーに注目され始めたのもこの頃で、それまで下着や靴下といった肌着がメインだったニット製品の多様性を示し、一躍ファッションアイテムとして認知されるようになりました。

 

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その後の世界大恐慌や、世界大戦においては再度手編みの需要が高まり、多くの女性が兵士たちのために帽子や手袋などを編んでいたそうです。

 

ウールなどの素材が不足していたため、ほつれたり、破れたりといったもう着れないものを一度ほどき、編み直していたといいます。

 

 

1950~1960年代には素材となる糸の種類やカラーバリエーションが飛躍的に増し、よりファッショナブルなデザインで編むことが可能になりました。

 

Twinsetと呼ばれるプルオーバーセーターとカーディガンのアンサンブルは特に人気となり、服だけでなく毛布やバッグ、おもちゃなど様々なニット製品が生まれました。

 

 

1980年代に入ると一転、ジャージやスウェットなどの台頭もあり、ニット製品の需要は激減。

 

ジャージやスウェットはニットより低価格で大量生産が可能なだけでなく、手軽にプリントできることでファッションにおいての優位性を高め、同時にスポーツシーンにおいてもニット製品はその地位を奪われることになります。

 

 

1990年代には多くのサプライヤーがマーケットから姿を消し、ニット製品は一部のローカルや、趣味として家庭で編まれるものとなっていきました。

 

その反面、コンピュータをはじめとしたテクノロジーの進歩により、デザイナーやアーティストがニットのデザインの新境地を開拓。

 

様々なアプローチでニット製品に新たな息吹を吹き込み、後のリバイバルへの流れにつながります。

ニットの歴史 起源~機械編み

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ジャケットやプルオーバー、カーディガン、ベスト、マフラーやキャップ、そして靴下や下着などの肌着に至るまで今やファッションにおいては欠かせないアイテムとなっているニット。

 

言わずもがなですがニットは英語です、スペルはKNITと書いて、その意味は【編む、結合する】。

ちなみにKNITの語源はKNOT(結び目)から来ているそうです。

 

また、セーターという呼び方もありますよね、こちらのスペルはSWEATERで、意味は【セーター、汗かきの人】。

元々フットボール選手が減量のためにセーターをユニフォームに採用したのがきっかけで世に広まったそうですよ。

 

さて、普段何気なく着ているニット製品ですが、その歴史ってご存知ですか?

 

その歴史は想像以上に古く、確認されている世界最古のニット製品は4〜5世紀のエジプトにおける手編みの靴下だそうです。

 

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尚、編み物としては紀元前から存在していたようで、冒頭の画像のような壁画が見られる事で証明されています。

 

その後も11世紀頃のこれまた靴下が同じくエジプトにて発見されましたが、本格的な手編みの技術を形にしたのは中東のイスラムの人々だと言われています。

 

織物とは異なり設備を必要としないため、編み物は当時の遊牧民や農民たちにとって貴重な資金源だったそうです。

 

その後、地中海貿易ルートや植民地化などとともにヨーロッパやアメリカに伝わっていったニット。

 

ヨーロッパで見られる最古のニット製品は、13世紀半ばのスペインの修道院や大聖堂で発見されました。

イスラム教徒のニッターが編んだとされるクッションカバーや手袋には既にとても高い技術が使われていたそうです。

 

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エリザベス女王時代には手編みのニット製品が「メリヤス」と呼ばれ、とても人気があったと言われています。

ちなみに「メリヤス」とはスペイン語で「靴下」という意味。

 

当のエリザベス女王自身も、贈り物のシルクのストッキングを履いて感動し、その後はニット製品ばかりを愛用したように、この時代のヨーロッパでは男女問わずニット製品を身につけることがファッショントレンドになっていたそうです。

 

そんな中、1589年にイギリスのウィリアム・リーがStocking Frameという靴下編み機(横編み)を発明します。

 

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その後も産業革命において改良された機械が次々に開発され、ニットは手編みの時代から機械編みの時代へと移って行くことになります。